ポンペイにて/春日線香
 
は増えすぎた猫を間引いているつもりなのだろうか。落ちた地面で死にきれずに鳴いているものが大半で、中には無傷で走り去っていくものもあるようだが。



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掘れば掘るほど水が出てくる。時々、茶碗の欠片が。疲れたので駅舎を迂回して水飲み場に行くと、全ての蛇口が開け放ってあって、その下にみすぼらしい植木鉢が並んでいる。どの鉢にも泥が詰まっている。どの鉢にも白い虫が蠢いている。



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食うことと生きることは同じではないだろう。働くこともたぶん別問題。ポンペイを描いた絵の中で、人々はどこまでも幸せそうだ。用水
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