航路/たま
海は
海でしかなく
ひとは
ひとでしかないはずなのに
定期船に乗って
航路に出ると
なにもかも
忘れ物したみたいで
空っぽになったわたしは
地球ではない地球のどこかへと
まっすぐ
流されて行く
それが
あの日の
約束であったとしても
あの日が
いつであったのか
だれと交わした約束であったのか
思い出そうとする
意思さえも
海は
拒んで
わたしだけが
流されて行くかもしれない
航路は
でこぼことした
波のうえにあって
とてつもなくおおきな
生きものの
背中であったとしても
尋ねようのない不安は
風にちぎれて
海は
海でしかなく
わた
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