小夜時雨の街/帆場蔵人
 
は彼が少し、いやかなり苦手だ。誰も彼もとうまくやれてしまうナジムはぼくと正反対だから。

広場には無数の柱が建ち並び、雨合羽を着た銀鼠たちが糸車を手にチャカチャカと忙しく走り回って柱に糸をかけて回っていた。彼らは生粋のアーティストで柱にかけた糸で、様々なものを編んでみせるんだ。遠くたかい空を往く鯨神や鳥たち、それからさらに高みにいる雲間からのぞく眼を喜ばせるために、毎日、昼夜を問わず動き続けているんだ。ナジムはいないかい? そう問いかけると銀鼠たちは妙ちくりんに鼻をひくひくさせて、顔を見合わせるとまた作業に戻ってしまった。仕方ないからぼくは歌い始める。ナジムはいつだって歌があるところにいるんだ
[次のページ]
戻る   Point(2)