ある詩集を読んで/◇レキ
 
氷山のような、きっぱりとした寄せ付けぬ高潔さではない、陽だまりに咲く、ぷよぷよ風に揺れている暖色のちょっとした、しかし繊細で緻密な背の高い野花のような、そんな美しさなのです。
何故心の痛みが溶けるのか、それはきっとその瞬間を切り取る性質を持つ詩というものが、かわりに崩れて泣いているからなのです。それは「今」ではありません。しかし文字は生きたままそこに「その瞬間」で在らせ続けるのです。
心の砕きや、途方も無い虚脱、死に死を続けた心の、ふと溢れるようなしわぶきが、苦笑うように微笑んだ時の小さな頬の皺が、誤魔化すような欠伸が、思い出したようなくしゃみが、あなたの詩なのです。
僕は、あなたの詩集を全
[次のページ]
戻る   Point(0)