朝の窓辺のスケッチ/春日線香
 
 窓辺に石を置いて。

 太陽の銀の腕が頭の上をかすめて、ぼくは聴いている。耳
のないきみもまた、同じように。高速道路を走る軌道トラッ
クが光を遮って闇を目指していた。オーガンジーの彩に……。
 それとも、割れた壺のように?

 イヤホンが片側だけで片歌を歌っていた。
 低く飛ぶカラスの群れにつられて、鼠も目を覚ます。
 徹夜の人々が溢れ出すのが、この時空ではよろめきという
言語で記された、ただ、瞼を焼いて髪を逆立てて。その時、
夢見られた夢がゆっくりと引き潮に乗って逃れ去る。
 射手座と蠍座が牛乳を降り注ぐ。街路樹たちは、うんと伸
びをする。
 ぼくは一人だ。


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