幽霊の感触―即興詩の試み/春日線香
 
過ごせばいいと考えている。溜まった洗濯物をどうにか片付けて、先送りにしていけばいい。その都度考えればいいと、今は楽な姿勢で本でも読んでいればいいのだと。窓から眺められる近所に工場の煙突があって、晴れた日には煙で雲と大気と繋がっている。


         * * *


博物館のエレベーターで上に運ばれる。その後に地下へ。構造の中で身体が物体となる。ガラスケースの中の類人と目を合わせて、唇の端で薄く笑ってみる。組み合わされた標本のラベルを読むために身を屈める。背中の骨が一斉に動く。


         * * *


地下鉄の出口ではいつも風に吹かれる。シャツの裾がはた
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