針女その他の物語 2018・9-10/春日線香
の輪の中に光の反射が導かれて、光に掠められた子はすうっと消えてしまう。悲鳴すら聞こえない。土手の上から悪魔が鏡を反射させて一幕を楽しんでいる。血の味の煙草を吸って血の味の煙を吐く悪魔。
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校庭のどこかに棺が埋めてあるらしい。まん丸な桃を齧りながら校長が教えてくれたが、僕たちは知っている。棺の中には誰も入っていないのだと。海にさらわれて上がってこない校長を偲んで、教師連が生徒に秘密で棺を埋めたのだと。まだ四十九日も済んでない校長が嬉しそうにかぶりつく桃の汁がたらたらと教室の床に滴って、甘い香りが辺り一面に漂った。
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