針女その他の物語 2018・9-10/春日線香
 
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棚の整理をすると黒い泥が詰まったビニール袋が出てきた。たぶん玉ねぎか何かを仕舞い忘れたきりで、腐り落ちて液状化したものなのだと思う。袋が破れていれば大惨事になっていただろう。二重三重に包んでゴミに出したあとは、これも消費期限をやや過ぎたマカロニを茹でて食べることにする。泥の詰まった袋が遠くどこかへ運ばれていくことを考えながら、暗闇に吊り下がる胃の重さを感じている。


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川縁の遊水地に子供が十人ほど輪になって佇んでいる。どの子も下着を着ただけの格好でじっと正面に目を向けて、わずかに呼吸しているのが肩の微細な動きでわかる。その輪
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