キリストとフクロウ/ホロウ・シカエルボク
 
々のそれぞれが生存を争い、出遅れた木は腐って隙間に折り重なっていた。五分に一度はそいつらを乗り越えて進まなければならなかった。あっという間に身体は土にまみれた。それでも俺は休まずに進んだ。ここに辿り着いたのなら、ここなのだ。樹海の底は戦争の後のような隆起に満ちていた。つまずき、転び、喘ぎながら懸命に歩いた。そんなふうに森の中を歩くのは初めてだった。幼いころに遠足で歩いた遊歩道のことを思い出した。あれは森ではなかったんだな、そう思うと笑えて来た。今頃になって、俺はあれがインチキであることを知ったのだ。それは少なくとも、そのときの俺にとってはとてもよく出来た笑い話だった。一時間ほど歩くと隆起が少なくな
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