透明なナメクジと金の飾りに、骸骨のお姫さま/田中修子
 
ってしまいたくなるのです。
(いろんなことがあった。いま思えば、森で死んでしまっても惜しくはなかったのに、このからだで、まだ生きてしまっているわ。なにもよくなってはいないわ。どうすれば死ねるのかしら)
そればかり考える日々。
 ある日、薔薇が咲きました。
 香りにさそわれ、ふっとしげみから出ます。あんまりに、その黄色い蕾やらひらいた花やらがかわいらしいことに気持ちがなごんでしいます。薔薇の冠りを編んで、青い夕暮れの空には、うっすら月が出ておりました。
 ふっと、息をおおきくつきました。
 しばらくぶりにこっそり浜辺におり、ぞっとするほど広い翡翠色の海のまえに立ち竦んでいるとき、ボロボロ
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