透明なナメクジと金の飾りに、骸骨のお姫さま/田中修子
 
北方からやってきたあるまじないの書を手に入れていたのです。その書をつたえひろめれば、すべてのひとびと、村人も狩人も兵士も、そうしてかつては石つぶてを投げつけられていた魔女たちも、みなひとしく幸福になるというものでした。
 修行をしに町におり、黒いマントをかぶって北方の書の素晴らしさを人びとに説いていたところ、姿かたちのよさを見抜いた領主にひとめぼれをされ、その日のうちにうつくしい恋文とからだと同じ分の金をうやうやしく差し出されました。
 奥方は、だれよりもすぐれた魔女になるために一生乙女でいることを幼いころからまわりに告げておりました。家系の中の、結婚して魔力を落としたものをあざけってすらおり
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