ちいさなちいさなことばたち/田中修子
 
に返してくれるから

いつか

花の咲くように
鳥の飛ぶように

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「ふりかえる」

じょうぶな
みひとつで
どこどこまでも
そらをつきぬけて
ひとのあいだをただよい
うみのはてさきまで
いきてゆけていた
くるしみの
ひびが
ただひたすらに
なつかしい

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「麦茶」

五月の
雨の翌朝に
冷蔵庫で冷えたキュウリを
かじると
歯が
シミシミした
おなかが
クルクルした
麦茶の湯気

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「ねどこに花は散って」

終わってしまえば
いい生き方だったと
老兵の
死ぬように
毎夜眠る
今日友と
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