白い小舟/オキ
なかった。
嵐がおさまった翌日の朝、少女が目を覚まして窓を覗くと、舟は消えていた。あの白い舟だけでなく、一艘もなかった。
その夜少女は夢を見ていた。白い舟を先頭にして、何艘もの舟が一列に繋がって、海から空へと昇って行くのだ。
先頭の白い小舟はあの大雨に洗われたのか、汚れなど一つもなく、ピカピカに耀いて、しかも舟には、蜜柑が山となって積まれていたのだ。
「天国にお見舞いに行くんだわ」
そう呟いて自分の頭を叩いた。天国に病気など無く、それなら病院なんか、ないにちがいないと、思えたからである。
「ではあの舟は、どこへ行くのかしら」
少女は夢の中で考え込んだ。そして、こんな結論に導
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