断片/鷲田
 

大きな失敗とは小さな成功の積み重ねなのだ
ニューヨークでの出来事が、東京での悲観に繋がり
香港での落胆が、上海での希望に変わっていった

3
冷え切ったコンクリートの硬さに風は何時もより体の芯に響く
寒さが歩いて行くのが見える
街の言葉は許された僅かな秘密
駅前にあるレストランは名前を変えて新しいレストランに変わっていた
どこかに忘れた夢は現実に打ちのめされ彼方の空に舞っている
年の瀬の明かりに「ただ孤独である」と男がタバコを吹かして言った
その孤独に塗れた甘味はやがて喉元を抜けていく

4
雪が降ったある日の女の神経は過敏だった
見えない物事が意味を語りだし 
[次のページ]
戻る   Point(3)