夢夜、四 獣の影と永遠の放課後の廊下?/田中修子
した闇にしてしまう。深海に泳ぐ魚の、誰もしらない腹のなかの闇と同じ。
食べられたら、私も骨も残さずに闇に同化してしまって、次の犠牲者をいっしょになって追いかけることになるだろう、この獣の影はそうやってできたのだから。自分が飲み込まれることよりも、自分が飲み込む側になることが、おそろしくてたまらない。
命がけで、ほんとうに必死に逃げているつもりだったが、子どもの追いかけっこのように、奇妙に遊んで笑いだしたくなるような気がするときもあった。必死に誰かの顔色を窺ってまじめな顔をしようとするとき、なぜだか自分でもぞっとするくらい卑屈な笑い方をしてしまう、あの感覚とおなじ。
ともかく体は、走って
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