夢夜、四 獣の影と永遠の放課後の廊下?/田中修子
 
っていた。

 ただ、どんなに走ったって、まったく同じ距離で、私の通っている女子校の汚物入れから匂ってくるあのにおいと同じなまぐさいを放ちながら、獣の影が迫ってくる。人の掻き切られた喉からヒュウヒュウと呼吸が鳴らすような音を、獣の影全体がさせている。
 
 走りながらどこかに入れる扉はないかと両目で左右を探していたけれど、どこにも扉はない。
 「1-梅組」のクラス札が下がっていても、「理科準備室」のクラス札が下がっていても、本来引き戸があるところには、防音ガラスの窓がはまっている。ふつうの錠のほかにも、ごちゃごちゃと補助錠がいくつもあって、あける余裕はない。その間にガジリと噛み砕かれてし
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