心の天涯孤独/あおい満月
せることが好きだった。親や教師や友だち、自分のために泣いてくれる人が好きだった。泣かれることは快感だった。アトピーで被れた皮膚を?き乱すように?けば掻くほど止まらない快感だった。まず、面白かったのは父親だ。普段は愛人の家に入り浸っていて、ろくに会社にも行っていない父親が、私が自転車で転んで顔に怪我をしたとき、大粒の涙をこぼしていた。私は反省などしていなかった。心のなかで「ざまあみろ」とほくそ笑んでいたのだ。それが当たり前だった。父親は目の見えない母親を泣かせて、好き放題に生きていたのだから。私がそんな父親を赦せるはずがなかった。私はどんどん父親から逃亡していった。逃亡しながら父親を排除する術を学ん
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