シェルター/汐見ハル
ゃないよ。
うん、でも。
ねえ、死んだらひとは、どこにいくのか知ってる?
あの世?
うん、あの世って
河の向こうにあるんだって。
ひとは死ぬとき、舟に乗ってその河を渡るというけど、
でもあたしはそうじゃないと思う。
歩いて渡るんだ。
剣みたいな激しい流れにずたずたになりながら
苦い水をたらふく飲んで
それでもなお、渡らなければいけない。
振り返っても、もといた岸だけが見えなくなっていて、
まるで大海原に放り込まれたみたいにひとりぼっちで
向こう岸だけがはっきりと見えるの。
だからそこを目指すしかない。
河底の砂利を擦る水の音に紛れて
なつかしい人の
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