『境界船アリス・ドライブ』/川村 透
 
にぎこちなく
彼女の肩に指を伸ばす
それから、
よこしまなディストーション、あらわにして
腰のごつごつで、ぐりぐりと木の根を踏んでみせる
よこたわる少女の
記憶の海を洗う土用波
越えて捕鯨船のやってくる気配
あおざめた鯨の息吹、こううっ。
潮のひとつぶひとつぶが
時にさらされた素粒子となって森に還ってくる

フィトンチッド

ちっとも熱くならない蒼の瞳で君は僕をただ視ている
僕の車はカブトムシみたいにじっとしている
ドイツ箱はどこだろう君の肩に止まる天使蝶と目が合って
僕たちに寄り添う虫たちのつやつやが変に鮮やかだったりする
ごつごつとした、しとね、木の根っこは
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