『境界船アリス・ドライブ』/川村 透
 
こは、
僕たちのブルー・ウェーブに翻弄されては沈み、あるいは浮かぶ
僕たちはブルー・ホエールを幻視しながら森を海に変えてゆくだけだ
君が、赤い和服で鯨の背に乗る、少女だったとしたら。

フィトンチッド

僕は森の瞳で
ブルー・フィルムの登場人物みたいに、ただ、ぎこちなく
ブルー・ホエールを幻視しながら森を海に変えてゆくだけだ

僕の車を君のドイツ箱にしてあげる
君は、展翅板の溝に沿って
シートをリクライニングするみたいに滑らかに
蝶、たちと一緒に、僕も、磔にするんだろう?
君の首飾り、てんとう虫のようにキッチュな十字架にキスをする
天使蝶が君の肩で融けてゆく
森を海に変えて君は捕鯨船のように僕を追い詰めているんだ

フィトンチッド

せせらぎとアスファルトの
森と海の
君と僕の


境界船アリス・ドライブ。


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