名もなき鼠のように/TAT
た
前ばかり見て上をお留守にしていたから
雲が退いてゆくさまを気に留めていなかったんだな
だがいいじゃないかそれで
今はそれを幸いにして進もう
まだ先は長いから
消えてゆく雲を
笑う必要も思う義務もないさ
トルストイも言っていたじゃないか
光あるうちに光の中を往けと
迷わず行けよ行けば分かるさ元気ですかと
気が付けばもう
道は長く
ふるさとは遠く
愛する人も無い
けれど
憎むことも
怒ることも
悲しみや諦めも特に無い
働くために働き
生きるために生きて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)