花柄/カワグチタケシ
 
そしていまも僕はそこに立ち返る
郵便箱を開けて
役に立たない文字を数える

いずれひとつの細胞が滅びて
別の疲れた細胞に取って代わるように
僕たちは繰り返し雨が上がるのを待つ

はたして再会は叶うのか
郵便は今日もある確かさをもって配達され
いくつかは読まれずに捨てられ
いくつかは読まれたのちに捨てられ
捨てられなかった残りのいくつかが
深く記憶に刻まれる

花柄のプリントの下の純白のキャミソール
人は人を抱く
人は人をその服ごと抱く

「直接」とはなんだろう
夕刊ほどの重さもない

かつて空路によって縮められた距離を
いまの僕は縮めるすべを持たない
[次のページ]
戻る   Point(2)