花柄/カワグチタケシ
 
花柄のキャミソールの下の 
薄い胸の底で
彼女は
どんな痛みも光に変える
その声はまるで
強い雨の中を上昇していく一羽の水鳥
国際空港に次々着陸する旅客機が
サーチライトの光を放ち
暴力的に大気を振動させる

伝えることが難しい感情を伝えるために
僕たちはいくつかの夜を眠らず過ごした
大量に消費し尽くされた僕らの言葉は
結局ひとつの別離へと収斂される
いくつかの重要なエレメントを自ら手放して
この先なぜ生きていかなくてはならないのか

最寄駅から自宅までの道のりは雨
電球のあかりと日常の匂いの待つ扉を開けて
彼女は雨を逃れる

それはかつての僕の姿
そし
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