夏の終わりにー小さな庭の物語??/忍野水香
を引っ張って、ハサミで切って、ようやく玄関から空が見えた。下から引っ張って切り、ベランダから引っ張って切り、ようやく家の壁が出てきた。
花も実も楽しませてもらったが、巻き付かれていたアーモンドの樹は、蔦で締め付けられ、葉で覆われて陽が当たらず、あちこち葉や枝が枯れ、瀕死の状態だった。成長が華々しく、著しい存在の陰には、こういう負担を強いられ、痛手を被る存在が往々にしてある。
陽の射さない裏側は枯れてしまっているが、それなのに、パッションフルーツの根元の辺りから、アスパラが巻き付き、ベランダまで達していたのにはとても驚いた。アスパラが蔓のように伸びて、ぐるぐると巻き付き、三メートルにもなって
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