雪原の記憶/山人
ギや鴨では一番の獲り頭となっていた。「熊を撃て」と言うが、「いや、俺は勢子が良い」と、自分の持ち場を決めていた。
私と隅安は遅れて本隊に合流した。熊のおよその居場所は掴めているようだ。大門山塊に白姫(一三六八メートル)というピークがあるが、その一〇〇〇メートル付近に居るとのことだった。隊は十一名、鉄砲場(射手)三名、目当て(指示役)二名、本勢子三名、受け勢子三名という人員配置であった。私達は受け勢子で、最も熊との遭遇が考え難い配置にあった。
本隊は上白姫沢左岸尾根一〇〇〇メートル付近の熊を囲むように配置された。我々受け勢子は、上白姫沢左岸尾根の左手にある黒禿沢左岸尾根に取り付いた。一番若い
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