/紅月
けれど、言葉をすっかりわ
すれてしまったわたしは鸚哥になんと声をかけたらいいのかがさっぱりわからない、なが
い冬の渇きや飢えが過ぎ去ったあとの、はげしい暴食ののこりかすだけが、鸚哥の血や羽
根となって部屋のそこらじゅうに散らばっている、手に鸚哥をにぎったまま、わたしは立
ちつくす、窓の、外はいまだ吹雪き、空気の抜けるような声で、うたで、さえずる鸚哥、
ことばが巡るうちに
かたちがついていけず
見えるものだけが何度置きざりになっても、
それでもどうか
そのたびに掬いあげてほしい、
ひとりのわたしにあげられるものはこれだけの重さしかないから、
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