/紅月
 
ら、




動かなくなった鸚哥はまるではじめから死んでいたかのようにしずかだった。抜けおちた
羽根をかきあつめ、部屋の隅で鸚哥のなきがらを燃やす。葬る、という行為の帯びるくす
ぶりだけがかつて鸚哥とよんでいたものを焼いていく。たくさんの羽根が熱に溶ける淡雪
のように縮れ、すぐに黒く丸まって焦げていった。そうして、さいごにのこされたかたち
はきっと鸚哥をとどめてはいないだろう、それでも、ひとりのわたしがうけとれるものは
これだけしかないから、と、冷めたあとの鸚哥のぎこちない骨をだいてわたしはつかのま
だけ眠ろう。もうじきごうまんな春があらゆる亡失を祝福するためにやってくるだろう、
そして、わたしはあたたかな酌量のなかに過誤を委ねることなどできない。このからだの
傷痕、ふたりだったころの言葉を、つめたい嘴はあまりにもするどく抉りつづける。
ある冬の朝、飼っていた鸚哥が死んだ、死んだ、死んだ、と、何度も。



 
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