エリカの缶/もっぷ
 
よいのかわからずに、お布団の上で転がったまま、ごくわずかしか離れていないエリカに触れることもできず、ただじっと彼女を心配そうに見ています。いつもより、誰も知らないちいさな部屋の、古いパイン材の机の上の時計の秒針はゆっくりと、ゆっくりと時を刻み、なかなか進みません。そしてここに記しておくべき重要なことがあります。「エリカの缶」のふたがエリカの許しを得ずに開いてしまったのです。思い出のカードが一枚、また一枚、時には二枚三枚とまとめて、どこかから吹き込んできた風に、どこかへと、飛ばされていってしまいました。それは実際わずか九つの少女には数えきれないほどの枚数で、それなのについに、「エリカの缶」はいつか空
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