エリカの缶/もっぷ
 
か空っぽになってしまったのです。アネモネはもどかしくてたまらないけれどどうすることもできず、かなしそうにその様子を見ていることしかすべもありません。

 やっと訪れた深夜、日付は二十一日、待ちに待った冬至です。その日、まさにその日、エリカの住んでいた誰も知らないちいさな町は、もう、どこにもありませんでした。もしかしたら、無人の灯台のある、無人の島、そのあたりが位置的にはエリカの町とほぼ同じでした。灯台は律儀にひかりを放って、この時間も仕事を続けています。とても大切な仕事です。この島の一つの不思議に、生態系としては珍しく、エリカという名の植物が群生していました。花言葉には諸説あって「孤独」という
[次のページ]
戻る   Point(1)