夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
たたかすぎる風が吹いていた。

天幕の下ににいたのは、王と女王と王女であった。

 王はげっそりとこけた頬で、くちゃくちゃぺちゃぺちゃと、肉や酒を口にしている。
 女王と王女は噂通り、豪勢な宝石で編まれた、首元まで多い隠すずっしりと重そうなドレスを着、絹の手袋までつけた隙のない美しいいでたちだ。しかし、女王は淡い桃の扇、王女は薄荷色の扇で顔を隠している。
 あの、儚げな王子はいない。-あなた、どこにいるの?

「わが家族で一番の、賢い嫁よ。よくぞ、よくぞ、またぞ長い時を経て、ワシらのもとに帰ってきた」
むしゃむしゃと肉を食いちぎり、酒を飲み、つっかえながら、王がひからびたよう
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