夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
ような声でいう。
「またよく帰ってきましたね。あたくしの息子の妻よ。こんにちもまた、心より歓迎しようではありませんか」
かすれてはいるがとても品のある発音で、女王がいう。
「義姉さま、おかえりなさいまし。いつかのようにまた、わたしと遊んでくださいませね」
咳で喉をつぶしたような声で、王女がいう。
 女王も王女も扇で顔を隠していて、扇にさえぎられ風にふかれ、声はかすれてどこかへ飛んでゆきそうな気配だ。
 けれども、その声には、本当に私を歓迎するこころがこもっていた。
 なぜだろう、初対面のはず、それも殺さねばならぬ相手なのに、私も多くを分かちあった家族に迎えられたような気がし、突っ立っ
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