夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
くっきりと浮かぶ目出度い紅白の梅の木が見える。
 低い距離の薄っすらとした、刷毛で白を塗られたような雲の上をかけぬけて、紅城が見えてきた。屋根も、壁も、いくつもそびえたつ塔たちもすべて、赤珊瑚をすりつぶしたもので塗られているが、民の血をぶちまけたようにも見えた。

 やがて紅城の中に、巨大な庭園が見えてきた。赤に、緑に、目が眩しい。庭園の中には、迷路である緑の生垣の刈り込みが見える。
 その中心、まぶしいように噴水がきらめく場所に牛車はふわりと着地し、勝手に扉が開く。天女たちもつぎつぎと降り立ち、いそいそと真向かいの白い天幕に向かって赤い絨毯を引き、また花を散らす。春の日にしてはなまあたた
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