夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
-師と私がしていたことは、すべて無駄だったか。王家に見抜かれていたか。王宮で私を待つは、首を切り落とす処刑台か、命がはてるまで続く拷問か。
約束を果たせないのは悔しいが、 私を育てあげ、彼女のすべてを注ぎ込んだ、愛しい師を殺した私には、ふさわしい終わりではないか。
牛車に乗る。いないはずの牛のひずめの音がして、牛車が浮くのが分かる。
硝子窓から覗くと、後ろから淡い布を首にかけた侍従や奴隷が、青い空にふわりと浮いて踊りながらついてくる様子は、幼いころ老女に読んでもらった、他国につたわるおとぎ話の天女のよう。
下を見ると、貧しい街や枯れ果てた畑の灰茶の中に、不自然にくっ
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