夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
立ったまま涙があふれてだして止まらない。なみだが頬をつたい、ぽた、ぽた、と落ちる。
 ゴウっという強い風が吹いて髪の毛が頬を叩き、我に返った。 
 唇を噛んでうなり、噛みつくように、女王と王女に問う。
 「歓迎するというならば、扇に隠さず、顔を見せろ。その扇の陰で、ニンマリと笑っているのではないか」
 女王と王女は身じろぎをした。そして、そっと扇を伏せた。
 
 ふたりとも真っ黒にしなびた、ミイラであった。
「もうよろしいわね」
女王がそっと言った。
「わたしたちがこのようになり果ててしまいましたのもお忘れですか、お義姉さま」
王女が眼窩から流れない涙をぬぐおうとする。ひらりと
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