夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
 
ほとんどの犬が消えてゆくようだ。中には、ずうっと走り続けている犬もいるようだけれど……。
 その中の一匹に見覚えがあった。
 老いてまっしろに近い色になった、シェットランド・シープドッグ。
 私が幼いころ、老犬になって面倒を見きれないという理由で、どこかに連れて行かれた、私の親友だった犬だ。笑顔みたいな犬の口。目が合う。私の前をかけぬける。そうして、もう、私の前を走りぬけることはなかった。消えてしまった。
 涙がボロボロと出てきた。
 それは、あたたかい涙だった。

 「ここには、屠殺場で殺された白い犬たちの魂が集まるんだよ。好きなだけ駆け抜けて、満足したら消えてゆく」
 
 立
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