夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
私はもう必要とされなくていい。灰色病になってしまったし、これからもし七色薬をみても、おかしな色の世界でいきてゆくだけなら、もう、いい。
円形闘技場のなかに入る。
そこには、外では降っていなかった細い細い雨が降っていた。
それは、静謐な澄んだ青い色をしていた。
闘技場の中は青灰色にけぶっていた。
まだ世界が灰色でなかったころ、梅雨の時期に見えていた色だ。
私が愛する、静かな青色。
闘技場の中には、巨大な真っ白い犬たちが、音もなく闘技場の中をくるくると駆けていた。ふと気付いたが、同じ犬たちがずっと闘技場を駆けているのかと思ったが、そうではない。何回か駆けては、ほと
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