夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
をもらい、最後の灰色の世界を堪能するためにふらりとやってきたのが、両親や教師から立ち寄るな、と禁止されていたこの円形闘技場だった。
あんな歴史建造物、壊してマンションにして、働く人を増やした方がこの町の発展になる、と、両親も教師もいう。しかし、苦虫を噛みつぶしたような表情で、あそこは花の時間にまもられている、という。
あそこには、モモが亡くなるときに残した時間の花が咲いている、と。だから、マトモな人間は近寄らないほうがいい、と。効率的な行動を吸い取られて、本や季節や料理を楽しみながらのんびりとしか生活できない、この世には必要とされない人間にしかなれなくなってしまうから、と。
私
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