夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
 
て、わしのかわりに、白亜がひからびて倒れておった」
笑いを作ろうとしている口元が震えている。
「白亜を埋葬したところから、何もしなくてもみのる畑が、年を取らぬヤギや鶏が湧いた。闘技場の石段が花壇になり、花が咲き乱れ始めた。そうして、白い犬たちが駆け抜けはじめ、わしはまいにち、あれらの花の手入れをし、かなしい顔をしてよってくる犬には、花で編んだ首輪をつけた。そうしてわらった犬は、何周か走ると消えてゆくのさ。この仕事をしてもう何十年になろうか。しかし、そろそろ潮時じゃ。わしは、そろそろ死ぬ。なんとなくわかるもんじゃよ。だから、お前さんに、この仕事を引き継いでほしいんじゃ。単調な毎日じゃよ。飯を食い
[次のページ]
戻る   Point(2)