夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
 
かなしげに笑う。
「同輩には、元の色を取り戻すだけでは足りぬ輩がいた。製薬会社もそうじゃった。いつの間にか七色薬はわしの手の届かぬところにいった。もっと素晴らしい、華やかな色を!! 世界をバラ色以上のものに!! そうして、灰色病の発症者は、灰色病であったほうがまだよいような、狂った世界で生活しておる。わしは、そのころ唯一のわしの親友であった犬のボルゾイの白亜を連れ、闘技場に来た、いや逃げた。そのころのこの闘技場はは空っぽじゃったよ。わしは餓え死ぬつもりでおった。何日飲まず、食わずだったかもう覚えておらん。倒れた。そして起きた。干からびてからからになっておったはずのわしの体はピンシャンとしていて、
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