花の化石/白島真
 
キカエル ワタシノマチ
   アノトキ ヒツギハ ワタシミズカラガツクッタ 釣鐘草

 街はずれの色のない沼から
 鴫(しぎ)が真っ黒な脚を水面に残して飛び去っていった
 「しぎ」という名前が記憶されたそのとき
 少女はみずからの棺を水底に見た気がした

   「お父さんが動物園につれていってくれたのよ」

 少女は象使いが好きだった
 象を調教するとき、その背中を歩く蟻までが調教されていると知っていたから

   「ワタシ、いつか象の背中に乗って、月の砂漠を旅してみたい」

 月がぼわぼわと照っていた
 この街では月は喩としてのみ存在する
 ダークルナ、あ
[次のページ]
戻る   Point(28)