花の化石/白島真
キカエル ワタシノマチ
アノトキ ヒツギハ ワタシミズカラガツクッタ 釣鐘草
街はずれの色のない沼から
鴫(しぎ)が真っ黒な脚を水面に残して飛び去っていった
「しぎ」という名前が記憶されたそのとき
少女はみずからの棺を水底に見た気がした
「お父さんが動物園につれていってくれたのよ」
少女は象使いが好きだった
象を調教するとき、その背中を歩く蟻までが調教されていると知っていたから
「ワタシ、いつか象の背中に乗って、月の砂漠を旅してみたい」
月がぼわぼわと照っていた
この街では月は喩としてのみ存在する
ダークルナ、あ
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