花の化石/白島真
 
、あの忌まわしい近親の記憶       
 少女の影が歪んでみえる
 月の影の高みから、つねに、にぃっと、とざすように
 見ているのは誰だ
 
 純潔という名のこの兇暴*
 肉は目ざめた腐臭のうちにあり
 少女の左手はいつも右手に傷つけられ
 右手は左手の苦痛を知らなかった
 セカイは思惟と思いに分断された

   浮遊してくる白茶けたちちははの記憶
   抒情はいつだって孤独だ

 生きたまま化石になりたい少女がいて
 街は、ふるふるふるふる古井戸
 叫びの木霊はいつだってふるえている

         
           るるるる 井戸の奥から
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