うみのほね/田中修子
れしくなって彼の手を振り解いて駆け出した。
薄曇の空を映して、海は青灰色だった。砂に乗り上げて薄っぺらになってしまった海水は、透明なフィルムのようだ。そのフィルムは、一瞬だけかたまり、そしてすぐに壊れて、もと来たところに戻ってゆく。
砂のところどころに小さな骨が落ちていた。取り上げてよく見ると、その骨には空気を通すような細かな穴が一面に開いていた。
「殺された赤ちゃんの骨?」
私は彼に聞いた。彼は薄っすらと笑って首を降り、
「珊瑚が死んでかたまったんだ」
と答えた。私は海の骨みたいだと思った。
彼はジーンズに白いシャツのまま、海に入っていき、ぱしゃりと倒れこんだ。私もス
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