うみのほね/田中修子
 
人々の生活があからさまに浮き出すアパートが出現し出す。埃っぽい風を受けながら、水色や黄色のタオルケットが、一部屋一部屋の前の物干しに揺れている。よくわからない言語でおしゃべりをしながら、女たちがしゃがみ込んでビーズでブレスレットを作っている。古いかたちの自転車に乗った白いシャツの少年が、ものすごい勢いで私たちとすれ違う。
 ゆっくりと手を繋ぎながら、やがて道に海の砂があふれ出しているところまで来る。砂と、土の境界線は実は厳格で、小競り合いを繰り返しながら決してお互いの領土を侵略しすぎない。
 その境界線を私たちはすんなりと踏み越えてしまう。まるで何かから逃亡しきったような気持ちになって、うれし
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