うみのほね/田中修子
 
は、そんな有機的な建物は不思議に、そしてあたたかく見えた。

 それに、初めて見る海。なぜ海がほとんど高さの変わらないこちら側にやってこないのか、なぜ海はいつもうねっているのか、よく分からなかった。きっと海の果てには大きな白い壁があって、その向こうの砂漠から人々がその壁を壊そうと大きなハンマーで叩くから、ハンマーの衝撃で海水が大きくうねるのだ。壁を壊せば、砂漠の人々は一瞬で溺れ死んでしまうのに。

 その街に暮らし始めてすぐの頃、薄曇の日に、私は彼と一緒に海まで出かけた。建物が目に見えて低く、まばらになり始めると、道幅は広くなり、車が十台くらい並んで走れそうな道のこちらとあちらに、逆に人々
[次のページ]
戻る   Point(7)