うみのほね/田中修子
欲しかった。そこらじゅうにはびこっている電気ではなくて、古い時代のガスこんろ。青くて熱い火が幻のように立ち上がる、生きている熱。
私は親に電話をして金をくれと言った。一緒に男の人がいるといったらすんなり納得してくれた。私の親たちも昔そうやって出会ったのだ。
彼らは私の漂流の終わり祝いに部屋代を確保してくれた。それから数か月分の生活費として、うんとキラキラした、ごえんだまを一枚あげる、といわれた。-ふと違和感を覚えたが、なんだったろう。そうだ、お金。それだけで足りるんだろうか。いや、それでも多いくらいなのかもしれない。「まともに通用していない、誰も覚えていない」お金なのだから。
彼は大変
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)