うみのほね/田中修子
 
も覚えていないのに。ほら、誰も追いかけてきやしないよ」
店から出てきた私を自動ドアの脇で待っていた彼は寂しそうに笑って言った。

 金がまともに通用しているか、って、どういう、こと?
 彼が何を言っているのか分からなかったけれど、オツリ、お釣り、という言葉が急に頭に閃いた。真さんのところで、本のことを思い出したのと同じように。
 ものには値段があり、それより大きいお金を渡したら、お釣りが帰ってくる。
 それは、いつの時代の話だったか。
 今では持っている金属のコインでも紙幣でも、その中で適当に見繕って渡すだけ。コインを渡して紙幣が返ってくることもある。
 それなら何故、私は皮膚をす
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