一度脱いで、またはく/由比良 倖
った、と言っていた。僕は喜んでパソコンの代金を払った。学校が忙しくなったので、たろやんの叩く軽快なキーボードの音を長く聞けなくて寂しくなった。家に帰ってきても寂しくて、寂しい寂しいと言いながら布団を敷いた。
起きるとたろやんがテーブルの前にいて、僕が目をごしごししていると、弓形の眉をくいと上げた。そして「しめじご飯を食べたかったから私はあなたが起きるのを待っていたんだ」と自動再生みたいに澄んだ声で言った。僕は「僕は煙草が吸いたい」と言った。それから起き上がって、きっちりご飯を分け合って食べた。みそ汁を作っていなかったので、インスタントのとうふみそ汁を入れた。たろやんはゆっくりと、箸の先の方だけ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)