一度脱いで、またはく/由比良 倖
 
だけ使うようにして食べた。
「小説は、どう?」
「もう少しで、佳境」
「よかったね」
 それからたろやんは、部屋の中をぐるりと見回して、「随分すっきりしたね」と言った。
「パソコンを買うのにお金が要ってね。売れるものは売ったんだ」
「そう。とてもすっきりしたね」
「うん。おかげさまでね」
「ありがとう。のしや君」
 のしやというのは、僕の部屋の前に張ってある表札だ。それで僕は、のしや君になった。
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