一度脱いで、またはく/由比良 倖
 
う出で立ちで出てきて、「このひと、ジョン・スミスさん」と言って、僕を指さした。じゃ、サイン、と配達夫のお兄さんが言ったので、僕はJon Smissと書いた。変わった名前ですねえ、と彼は言って、たろやんはくすくす笑っていた。たろやんは小包を乱暴に破り始めた。かと思うと、破った紙を畳んで、ゴミ袋の底に、上手く折り重なるように置いていった。
「ねえ、ジョン」
「なあに」
「この間はパソコン壊してごめんなさい」
「いいよ。僕も使ってなかったし、たろやんに使ってもらえて嬉しかったよ」
 それで、たろやんはその日届いたパソコンを使って、また小説を書き始めた。たろやんは、新しくなって書くのが早くなった
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