またね!/もっぷ
はついに一眼レフに持ち替えて、気がつくと夕食の時に朝陽を相手に物知り顔で「ライカはね」などと言うようにもなり知識もすっかりませてくる。
職場での話を避けてきたけれど、妻となったひととは、同じ事業部で出会えた。それでもその後の中間管理職としての、いわゆる板挟みのつらい時期は長く、早く帰宅したくても望めない日も多い。サラリーマンの家庭に育ったのでそのことはいつともなしにある程度の覚悟はしていた。ただ、私の父はドロップアウトの道を選び、結果的には安定させて、いまは珈琲店を経営している。しかし、父よりも少し歳の若かった母は、昇進の話を断って会社を辞めてしまった父との生活に、愛想を尽かした。父が私を
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